Posted on 19:10:40 «edit»
いつわりの目覚め
よく寝た。体がそう告げている。何日間も寝たときは、このくらいスッキリしている。一体どのくらい寝たことだろう。そもそも、いつから寝ているのか。そして今、いつなのか。何も分からない・・・
少年はゆっくりと目を開けた。光が痛い。自然の、太陽の光だ。どうやら、夜や夕方ではないらしい。ここはどこだ?見覚えがない。木製の壁でできており、タンスが一つにベッドが一つ、部屋の隅には、一本の剣が壁に立てかけられている。窓は右に一個あり、そこから光が注ぎ込まれていた。
っーーー。少年は背伸びをして起き上った。その時。ぐっ!急に右肩から左わき腹まで、激痛が走った。痛い。何だこの痛みは?とたんに息が苦しくなる。視界が狭まる。一体何なんだ!?少年が痛みのあるところに目を向けると、そこには、黒々とした長い傷跡があった。その瞬間っ・・・
「ダメだよせ!よすんだ。」
剣が振り下ろされる。
「目を覚ますんだ!」
受け止めるので精いっぱいだ・・・
・・・・・おい。おい!大丈夫か?きみ。頭の中で声が響く。
っー。はぁはぁ。何だったんだ、いまのは。少年が目を覚ますと目の前には、一人の男性が立っていた。歳は三十ぐらいだろうか。
「あ、あなたは・・・誰ですか?」
男性が答える。
「君を拾った者だよ。道端にボロボロになって倒れてたんだよ、君は。まぁ、自己紹介から行くと、ラスファ。歳は三十二。この地区の魔物狩りをメノスに任せられている。」
ラスファと名乗ったその男性は、首にかかるぐらいの茶髪。肌の色は黒。そして、黒のTシャツと迷彩柄の短パン。腕や足には無数の傷跡が残っていた。
俺、道端に倒れていたのか・・・。一体なんでだ?それとメノスって何だ?再びラスファが口を開いた。
「なぁ、君こそいったい何者なんだ?その体の傷に、そこの剣、それと、胸のいれずみ。特にあの剣なんか、そこらへんで手に入るものじゃないよな。」
傷に剣にいれずみ・・・確かに疑問に思うだろう。でもそれより分からないことがある。
自分自身の事・・・
「俺は・・・誰なんだ?」
男がビックリするような表情になった。
「おいおい、まさか記憶喪失ってやつか?」
「おそらく・・・。何一つ覚えてないんです。俺の名前。傷に剣にいれずみ。ホントに何も・・・」
こんなにも不安になるものなのか、記憶喪失というものは。自分が分からない、恐怖に似た感情だ。記憶を失う前はどんな人間だったのか・・・
暗い表情をする少年を見て、ラスファは少し考えてから言った。
「そんな暗い顔すんなって。ひとまず、胸の傷は完治して無さそうだな。」
それから、少し考え込んで、
「よし。じゃあ、しばらくはここにいてもいいぜ。今追い払うわけにもいかねぇしな。そのあとのことはゆっくり考えりゃいいだろ」
「ほんとうにいいんですか。」
そう聞くとラスファは、当然のように頷いた。
「あ、ありがとうございます。これからよろしくお願いします。」
ほんとうにいい人に会えた。見ず知らずの人をここまで暖かくしてくれる人はいるだろうか。
「よしっ。そうと決まったら昼御飯だな。3日間寝て、腹も減ってるだろ少し待っていろ」
そう言い部屋を出て行こうとしたとき、ラスファが思い出したように言った。
「そういえば、そこの剣に名前が書いてあったな。オズメントだった。記憶が戻るまでは、その呼び名でいいか?」
少年は少し考える。
確かに、剣は俺の持ち物だったらしいからな。それでもいいだろう。
「わかった。俺は今日からオズメントだな。」
「よし。じゃぁ決まりだな。これからよろしくなオズメント。」
ラスファはそう言い残すと部屋から出て行った。
3日後の朝。
ラスファの介護のおかげもあり、傷はしっかり癒えて、起きることさえ苦ではなくなっていた。
もうそろそろ、傷が癒えたかな?そう言えばラスファは、治るまでここにいてもいいと言っていた。となると、もう出ていかないとダメなのか・・・。さてどうしようか。さすがに隠すのは悪いし、だからと言って、今までの記憶がないから、独りになったら何もできない。これからの事なんてあまり考えていなかった。そもそもにして、記憶が戻ると思っていたが、それ自体も大変そうだ。
体を起してオズメントは伸びをした。
まぁ、しょうがない。記憶の事はどうしようもないことだ。それよりも今は、自分がこれからどうするかだろう。
オズメントはちらりと部屋の片隅に目をやった。そこにあるのは、剣。俺の身長の4分の3ぐらいの刀と大剣の間ぐらいの太さの剣だった。
俺は、この剣をどれくらい使えたのだろう?ラスファは剣をここら辺では手に入らないと言っていた。それほど珍しい剣を俺は使っていたのだろうか。
ふと、オズメントの頭の中にある考えが浮かんできた。よし。これなら、ラスファも納得してくれるかも。
そこにラスファが入って来た。
ここ三日の生活の中ですかっり敬語で話す必要はなくなっていた。
「おはよう。ラスファ。」
「ああ、おはよう。起きていたのか、オズメント。」
「ああ。なぁ、ラスファ。」
「ん?なんだ、オズメント。」
まずは、傷が完治していることから伝えないと。
「えっと、俺の傷治ったと思う。こうして体動かしても、何とも感じないし。」
「そうか、そいつは良かった。本当に深い傷だったからなぁ。治るかどうか心配だったんだぜ。」
「ありがとう。で・・・さ。確か、初めのころ、傷が完治するまでここに居て良いって、言っていたよな。」
「ああ、確かにいったな。」
「そのことなんだけどさ。俺やっぱ記憶は戻ってないんだ。ここに来る前の事はみじんも思い出せない。だからさ、ひとつ頼みがあるんだ。」
「なんだ。頼みって。」
さっき思いついたこと、それは。
「俺、ここで働きたい。」
その言葉を聞くとラスファは少し驚いたように言った。
「おいおい、何だよそれ。俺の魔物狩りってのは、そう楽な仕事じゃないぜ。」
「それは、わかってる。でも少し考えたんだけど。あの剣って結構珍しいものなんだよな。」
「そうだ。ここらへんで、あそこまでアトリビュートを通す剣は見たことがねえ。」
アトリビュート?まぁ、そんな疑問はまたあとだ。
「だとしたら、昔の俺って、結構強い剣士だったんじゃないかって思うんだ。」
「なるほど。確かにな。だけど、記憶は元に戻っていないんだろ。」
「うん。そうだけど。記憶はなくなっても、か体が剣の使い方を覚えているかもしれない。」
そう。覚えているかも。そしてもし覚えていたら。
「だから、もし覚えていたら。ここでラスファの手伝いをさせてくれ。」
そう言うと、ラスファが
「うーん。そうだなぁ。」
二人の間に沈黙が流れる。一分ほどかんがえて、ラスファが口を開いた。
「よし。いいだろう。どうせ記憶失ってるんだろ。なら、少しは働いてくれた方がいいしな」
そう言って、ラスファは笑うと背を向けた。
「まずは、覚えているかどうかテストだな。少し待ってろ。今、服を取ってきてやる」
「ありがとう、ラスファ。」
十分後。ラスファが戻ってきた。その手には、白いTシャツや黒いハーフパンツを抱えている。
「これがおまえの服だ。倒れてた時はひどく汚れていたからな。洗濯しといたぜ。」
「ありがとう、ラスファ。」
「ああ、気にすんな。じゃあ俺は外で待ってるから。着替えたらすぐ来いよ。」
そう言い残すと、ラスファは出て行った。
オズメントは受け取った服をじっと見る。これが俺の服。あまり見ない、パーツもあるけど、どうやって着るのかは分かっている。オズメントは、白のTシャツと黒のハーフパンツをはく。残ったのは、黄色のジャケット。羽織ってから、前にひもを通す。やっぱり覚えてる。記憶はないけど、着方がなんとなくわかる。もしかしたら、こんな感じで剣も扱えるのかもしれない。そうだったらいい。そうであってほしい。
そう思い、着替え終わったオズメントは、壁に掛けてある、剣を背負って部屋を出て行った。
よく寝た。体がそう告げている。何日間も寝たときは、このくらいスッキリしている。一体どのくらい寝たことだろう。そもそも、いつから寝ているのか。そして今、いつなのか。何も分からない・・・
少年はゆっくりと目を開けた。光が痛い。自然の、太陽の光だ。どうやら、夜や夕方ではないらしい。ここはどこだ?見覚えがない。木製の壁でできており、タンスが一つにベッドが一つ、部屋の隅には、一本の剣が壁に立てかけられている。窓は右に一個あり、そこから光が注ぎ込まれていた。
っーーー。少年は背伸びをして起き上った。その時。ぐっ!急に右肩から左わき腹まで、激痛が走った。痛い。何だこの痛みは?とたんに息が苦しくなる。視界が狭まる。一体何なんだ!?少年が痛みのあるところに目を向けると、そこには、黒々とした長い傷跡があった。その瞬間っ・・・
「ダメだよせ!よすんだ。」
剣が振り下ろされる。
「目を覚ますんだ!」
受け止めるので精いっぱいだ・・・
・・・・・おい。おい!大丈夫か?きみ。頭の中で声が響く。
っー。はぁはぁ。何だったんだ、いまのは。少年が目を覚ますと目の前には、一人の男性が立っていた。歳は三十ぐらいだろうか。
「あ、あなたは・・・誰ですか?」
男性が答える。
「君を拾った者だよ。道端にボロボロになって倒れてたんだよ、君は。まぁ、自己紹介から行くと、ラスファ。歳は三十二。この地区の魔物狩りをメノスに任せられている。」
ラスファと名乗ったその男性は、首にかかるぐらいの茶髪。肌の色は黒。そして、黒のTシャツと迷彩柄の短パン。腕や足には無数の傷跡が残っていた。
俺、道端に倒れていたのか・・・。一体なんでだ?それとメノスって何だ?再びラスファが口を開いた。
「なぁ、君こそいったい何者なんだ?その体の傷に、そこの剣、それと、胸のいれずみ。特にあの剣なんか、そこらへんで手に入るものじゃないよな。」
傷に剣にいれずみ・・・確かに疑問に思うだろう。でもそれより分からないことがある。
自分自身の事・・・
「俺は・・・誰なんだ?」
男がビックリするような表情になった。
「おいおい、まさか記憶喪失ってやつか?」
「おそらく・・・。何一つ覚えてないんです。俺の名前。傷に剣にいれずみ。ホントに何も・・・」
こんなにも不安になるものなのか、記憶喪失というものは。自分が分からない、恐怖に似た感情だ。記憶を失う前はどんな人間だったのか・・・
暗い表情をする少年を見て、ラスファは少し考えてから言った。
「そんな暗い顔すんなって。ひとまず、胸の傷は完治して無さそうだな。」
それから、少し考え込んで、
「よし。じゃあ、しばらくはここにいてもいいぜ。今追い払うわけにもいかねぇしな。そのあとのことはゆっくり考えりゃいいだろ」
「ほんとうにいいんですか。」
そう聞くとラスファは、当然のように頷いた。
「あ、ありがとうございます。これからよろしくお願いします。」
ほんとうにいい人に会えた。見ず知らずの人をここまで暖かくしてくれる人はいるだろうか。
「よしっ。そうと決まったら昼御飯だな。3日間寝て、腹も減ってるだろ少し待っていろ」
そう言い部屋を出て行こうとしたとき、ラスファが思い出したように言った。
「そういえば、そこの剣に名前が書いてあったな。オズメントだった。記憶が戻るまでは、その呼び名でいいか?」
少年は少し考える。
確かに、剣は俺の持ち物だったらしいからな。それでもいいだろう。
「わかった。俺は今日からオズメントだな。」
「よし。じゃぁ決まりだな。これからよろしくなオズメント。」
ラスファはそう言い残すと部屋から出て行った。
3日後の朝。
ラスファの介護のおかげもあり、傷はしっかり癒えて、起きることさえ苦ではなくなっていた。
もうそろそろ、傷が癒えたかな?そう言えばラスファは、治るまでここにいてもいいと言っていた。となると、もう出ていかないとダメなのか・・・。さてどうしようか。さすがに隠すのは悪いし、だからと言って、今までの記憶がないから、独りになったら何もできない。これからの事なんてあまり考えていなかった。そもそもにして、記憶が戻ると思っていたが、それ自体も大変そうだ。
体を起してオズメントは伸びをした。
まぁ、しょうがない。記憶の事はどうしようもないことだ。それよりも今は、自分がこれからどうするかだろう。
オズメントはちらりと部屋の片隅に目をやった。そこにあるのは、剣。俺の身長の4分の3ぐらいの刀と大剣の間ぐらいの太さの剣だった。
俺は、この剣をどれくらい使えたのだろう?ラスファは剣をここら辺では手に入らないと言っていた。それほど珍しい剣を俺は使っていたのだろうか。
ふと、オズメントの頭の中にある考えが浮かんできた。よし。これなら、ラスファも納得してくれるかも。
そこにラスファが入って来た。
ここ三日の生活の中ですかっり敬語で話す必要はなくなっていた。
「おはよう。ラスファ。」
「ああ、おはよう。起きていたのか、オズメント。」
「ああ。なぁ、ラスファ。」
「ん?なんだ、オズメント。」
まずは、傷が完治していることから伝えないと。
「えっと、俺の傷治ったと思う。こうして体動かしても、何とも感じないし。」
「そうか、そいつは良かった。本当に深い傷だったからなぁ。治るかどうか心配だったんだぜ。」
「ありがとう。で・・・さ。確か、初めのころ、傷が完治するまでここに居て良いって、言っていたよな。」
「ああ、確かにいったな。」
「そのことなんだけどさ。俺やっぱ記憶は戻ってないんだ。ここに来る前の事はみじんも思い出せない。だからさ、ひとつ頼みがあるんだ。」
「なんだ。頼みって。」
さっき思いついたこと、それは。
「俺、ここで働きたい。」
その言葉を聞くとラスファは少し驚いたように言った。
「おいおい、何だよそれ。俺の魔物狩りってのは、そう楽な仕事じゃないぜ。」
「それは、わかってる。でも少し考えたんだけど。あの剣って結構珍しいものなんだよな。」
「そうだ。ここらへんで、あそこまでアトリビュートを通す剣は見たことがねえ。」
アトリビュート?まぁ、そんな疑問はまたあとだ。
「だとしたら、昔の俺って、結構強い剣士だったんじゃないかって思うんだ。」
「なるほど。確かにな。だけど、記憶は元に戻っていないんだろ。」
「うん。そうだけど。記憶はなくなっても、か体が剣の使い方を覚えているかもしれない。」
そう。覚えているかも。そしてもし覚えていたら。
「だから、もし覚えていたら。ここでラスファの手伝いをさせてくれ。」
そう言うと、ラスファが
「うーん。そうだなぁ。」
二人の間に沈黙が流れる。一分ほどかんがえて、ラスファが口を開いた。
「よし。いいだろう。どうせ記憶失ってるんだろ。なら、少しは働いてくれた方がいいしな」
そう言って、ラスファは笑うと背を向けた。
「まずは、覚えているかどうかテストだな。少し待ってろ。今、服を取ってきてやる」
「ありがとう、ラスファ。」
十分後。ラスファが戻ってきた。その手には、白いTシャツや黒いハーフパンツを抱えている。
「これがおまえの服だ。倒れてた時はひどく汚れていたからな。洗濯しといたぜ。」
「ありがとう、ラスファ。」
「ああ、気にすんな。じゃあ俺は外で待ってるから。着替えたらすぐ来いよ。」
そう言い残すと、ラスファは出て行った。
オズメントは受け取った服をじっと見る。これが俺の服。あまり見ない、パーツもあるけど、どうやって着るのかは分かっている。オズメントは、白のTシャツと黒のハーフパンツをはく。残ったのは、黄色のジャケット。羽織ってから、前にひもを通す。やっぱり覚えてる。記憶はないけど、着方がなんとなくわかる。もしかしたら、こんな感じで剣も扱えるのかもしれない。そうだったらいい。そうであってほしい。
そう思い、着替え終わったオズメントは、壁に掛けてある、剣を背負って部屋を出て行った。
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Re: No title
あっそう
by ヤミウミ
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